【中野剛志×藤井聡】グローバリズムからの脱却!【独自の視点を交えて要点まとめ!】

今回は我々が生きる上でとても役に立つ動画をご紹介しよう。

経済思想家・現役官僚 中野剛志と京都大学大学院工学研究科教授の藤井聡の講演だ。

保守思想の大家・西部邁の流れを組む二人の世界認識は、ここ30年ほどで急激に加速したグローバリズムの問題点を的確に突いている。

以下で、とりわけ重要な点を章立てて簡潔に記すのでぜひ参考にしていただきたい。

1.グローバル化の問題点

グローバル化(Globalization)」とはどういうことか?
ヒト・モノ・カネが国境を軽々超えて自由に移動するようになる現象である。
それは国家主権のコントロールが及ばなくなる範囲の拡大とも換言できる。
その状態を目指し、或いは不可避の歴史的流れであると主張する者をグローバリストと呼ぶ。
一般に、経済などが国家主権から自由になっているのだということが好ましいものとして受け取られてきた。

 ※大学における「国際」を冠する学部の乱立(それは社会のニーズの反映だ)、企業の英語公用語化推進など

しかしこれはよく考えてみると不思議な現象である。
なぜか? 次の章で考えてみよう。

2.国家主権とはなにか?

言うまでもなく日本という国は「民主国家」である。
つまり、軍事独裁国家や共産党独裁国家ではなく、選挙によって国民の代表を選んでいる。

その民主国家における国家主権とは、要するに国民主権である。
国民主権とはなにか? それは「民主主義」のことである。
したがって、次のような等式で表せる。

(民主国家における)国家主権=民主主義

これを踏まえて先の言説に立ち戻ってみるとどうか?

グローバルリズム=国家主権の制限=民主主義の制約・限界

どうだろう? 途端に「グローバリズムは歓迎すべきもの」と思えなくなってきはしないだろうか?
なぜなら、民主主義の制限とは、つまり我々の生活するこの国の方向性を、自分たちで決められなくなる範囲が拡大するということだからである。

したがって、グローバリズムに対してネガティブな反応を示すのは民主主義である。

現に近年、西欧の知識人たちが反グローバリズムを唱えてきた理由は、格差問題やデフレの問題もあるがそれ以上にグローバリゼーションの反・民主主義的性質に反発してのことである。

アメリカのトランプ現象やBrexit(イギリスの EU (欧州連合) 離脱)も正に反・民主主義的なグローバリゼーションへの民衆による政治的抵抗運動であった。

3.世界的な「グローバリズム疲れ」

上記の政治的な抵抗運動を「グローバリズム疲れ」という。
世界だけでなくそれは日本でも見られる。「失われた30年」と呼ばれる日本経済の低迷はグローバリゼーションが加速した1990年代以降と重なっている。

グローバリズムは国境を無視して世界的な競争を激化する。
つまり世界的な過当競争を引き起こす。 それは言い換えれば弱肉強食の世界である。
すると弱い産業・企業は軒並み潰れていく。中小企業がまず淘汰されていく。

そして当然所得も下がっていく。
理屈としては単純で、企業は競争力を高め利潤を最大化するために最大のコストである「人件費」を削減しようとする。
同じ仕事内容ができる人材であればより労働賃金の安い方がいい。
先進国の国民よりいわゆる途上国の国民の人件費の方が安い。
グローバル化によって生産の海外移転を突き付けられた先進国の労働者は賃金値上げ交渉力もなくなる。
世界の大部分を占める途上国の人件費と競争しなければならないので先進国にも労働賃金を下げる圧力がかかる。
これを「底辺への競争」と呼ぶ。

日本の企業の9割を占める中小企業が潰れていき、あるいは賃金が上がらず(場合によっては下がり)、国民は貧乏になる。するとマクロな景気全体も悪くなる(みな消費を控えるので)。
景気が悪く企業も物が売れないので、より人件費を抑えなくてはならず、海外から安い労働力を入れる。
するとまた自国民の労働賃金も競争に晒され、賃金を抑えられる。または雇用を失う。

国家間の競争なので、中国のように急激に経済力を伸ばす国も出てくる。
急激に国家間のパワーバランスが変わると地政学的な不安定性が増す。

そのような状況に嫌気が刺したので、アメリカやイギリスでは反・グローバリズムの流れが生まれた。

4.株主(=金融)資本主義が与えた影響

投資家、つまり株主の意見が強くなることを一般に「株主資本主義」または「金融資本主義」と呼ぶ

投資家の意見が強くなることとグローバル化には密接な関係がある。

どういうことか?
グローバル化によって資本は国境を軽々と飛び越える。
投資家はより配当の高い投資先を国に限定されず検討できる。
あるいはすでに投資している企業に対して、所有者である株主の利益を最大化するよう行動せよと要求する。

ありていにいえば「もっと配当をよこせ!」ということだ。

そのために、労働者の賃金を上げるな、人件費削減のために馘を切れという圧力をかける。
それに対して、以前であれば労働者や労働組合が反発を示していた。
企業側もストライキなどを起こされたら困るため、労使協調で労働者の要求にも応じて賃金を上げていた。

しかしグローバル化が進んだ現在では労働者のそういった主張に対し、企業は「そのようなことを言うなら工場を国外へ移転せざるを得なくなる」と脅しをかけられる。
すると労働者は働き口を失うため黙るしかなくなる。

5.グローバリズムが引き起こした所得格差

こうした歪なパワーバランスによって、所得格差が拡大している。

グローバル化が進んだここ20年で企業収益は2倍以上に増え、株主配当金は6倍に増えている。

 

一方で、労働者の賃金はどうかというと、横ばいどころか下落している始末である。

これでは投資家と労働者の間で格差が開くのも当然である。


参考 20年で進んだ国家の衰退 主要国で最低水準の日本の賃金 配当金や役員報酬だけはうなぎ登り長周新聞  

また、世界的な競争を強いられるため先進国の労働者の失業率は上がる。
非正規雇用者も増える。
その結果として所得格差が開くこととなる。

所得格差が開くと生じる大きな問題の一つに「経済成長を阻害する」が挙げられる。

「経済成長」という言葉で一般にイメージされるのは以下のような流れである。
イノベーション
  ↓
大企業の国際競争力をつける
   ↓
世界マーケットで販路を拡大できる企業を育成
    ↓
日本経済を引っ張ってもらう

しかし、これは誤りである。

経済が成長するためには次の二つの成長が必要である。

 ①供給力
 ②需要力

例えば、水を1億本も2億本も生産できる供給力があっても、それを誰も買わなければ収益は発生しない。
つまり物を生産する能力とともに人々の物を購入する能力も向上しなければ経済は成長しない。

 

6.まとめ―日本で反グローバリズムの潮流を生み出すために―

いかがであったろうか?
中野剛志氏と藤井聡氏の講演を聴き、すこしでも日本の現状に関心を持っていただければ幸いである。
まとめると次の通りである。

  • グローバル化とは民主主義が及ばなくなる範囲の拡大
  • グローバル化によって引き起こされた「底辺への競争」とそれに抵抗する人々
  • 「株主資本主義」の加速化
  • 中間層の没落による需要力低下→国内経済の更なる低成長化

最後に私が個人的に考えるこの「世界」への棹の指し方を列挙して終わろう。

まずは、現状を正しく認識すること
それから、ここ30年の日本政治を疑うこと
そして、その政治をしてきた政治家を選んできたのは大衆の政治的無関心と知的怠惰であったことを自覚すること

我々が消えたあともなおこの国で生活していく未来の世代に、
少しでもマシな何かを残していきたいと思うのは筆者だけでないことを願う。

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