【近畿大学図書館司書】図書館情報技術論[2022] 合格レポート

設題

図書館を最大限に活用するため、または利用を円滑にするためにはどういった情報技術に着目し、理解を深めるべきか。自身の意見を含めて論じてください。

解答

■序論
現代はインターネットの普及により情報探索環境が一変して久しい。人々は容易に回答が得られそうな情報要求の場合、回答入手の利便性や迅速性に勝るGoogle等の検索エンジンをまず使用する。一方で図書館およびレファレンスサービスを情報源に求めることは基本的にしない。
 そういった状況の中でなお「図書館」での情報探索に優位性や意義を見出し活用していくためには、どのような情報技術の知識を身につけるとよいか。本稿では「図書館業務」「情報資源」「サービス」の観点から考える。

■本論
Ⅰ.図書館業務のOA化
 まず図書館業務のOA化には、あらゆる企業がパッケージソフトを販売している。窓口業務、資料管理・ファイリング、収書・整理業務、統計帳票、館内OPAC等を効率的・包括的に省力化することが可能である。
 また、図書館は運搬用ロボットが設置された「自動書庫」を導入する図書館も増えつつある。製造メーカーとしては「金剛」「日本ファイリング」等が大手である。自動書庫のメリットは、資料を取り出すロボットが人より小型のため、移動を狭くでき、反対に資料の収容量を飛躍的に増加することができる。さらに図書館員の閉架スペースから図書を取り出さなくてよいため作業が大幅に省力化される。利用者への閉架の図書を提供するまでの時間も短縮可能だ。ただし、導入のための予算を確保できる図書館は多くないと想像される。
 図書館業務がOA化されることにより、図書館員がより人的サービス、つまりレファレンスサービス等の人同士の関わり合いが必須となる業務により多くの労力を割くことができるようになるだろう。

Ⅱ.情報資源のICT化
 現在多くの図書館の物理的資料の管理で普及しているバーコードに替わり導入を期待されているのが「ICタグ」である。これは物体識別用のICチップを埋め込んであり、そこから発せられる電波により資料―管理シス
テム間の送受信が可能となる。
 非接触での読み取り、情報の書き換えや大量の情報の蓄積もできる。そのため、ICタグの導入により「貸出・返却業務の合理化(数十冊の本の貸出・返却を一括処理)」「自動貸出の実現」「蔵書点検(棚卸し)の効率化(要するスタッフ数と作業の手間が削減され、休館日数の短縮や無化が可能)」など大きなメリットがある。
 一方で、ICタグを導入している図書館は少数派に留まっている。理由としては、性能面(読みたいタグを読まず、読みたくないタグを読む)の懸念や価格(バーコード:1~2円/1冊に対し、ICタグ:約数十円~100円/1冊)等の問題がある。

 電子化された情報資源やWebページ等のネットワーク情報資源の割合も増加傾向にある。これは利用者にとっても情報アクセスの利便性の向上などの恩恵がある。また、橋本(2015)に拠れば、人文学資料オープンデータには「①資料活用の多様化、②研究成果の再利用促進、③情報探索の効率化」などの意義があることを示唆している。

Ⅲ.サービスのICT化
 サービス面でのICT化ではまずWebOPACが挙げられる。OPACつまりオンライン蔵書目録システムは、検索語(タイトル、著者名、その他書誌事項)によって図書館の蔵書から該当する図書を検索できる。近年ではWeb上からOPACが利用できるようになり、館外から目的の資料を探せるようになった。
 「自動貸出機」もまた、利用者の利便性を高める技術である。これは借りたい図書を自動貸出機の指定の場所に置き、バーコードまたはICを読み取らせることで、貸出カウンターを経ず手続きが可能となる装置だ。借りる本を他者に知られない(プライバシー保護)こと、時間外の貸出・返却が可能となることなどがメリットである。

 図書館における情報(提供)サービスの中心はレファレンス業務である。レファレンスサービスには「質問の処理」「読書相談」「情報検索」等がある。近年インターネットの普及に伴い、非来館者に対するレファレンスサービスが増加してきた。それらはメールやWebサイト上の質問ボックスなどを介して行われる。これらは「デジタルレファレンスサービス」と呼ばれ、利用者の移動時間の短縮、開館時間にとらわれない利用に寄与している。

 一部では試験的に「アンドロイド・ロボットを用いた遠隔対応システム」を導入している図書館もある(梅谷,2020)。これはヘルプデスク対応の図書館職員が受付に在席せずに受付に来訪する利用客との対話が行え
るシステムであり、カウンター以外の場所で行う業務に従事しながら、持ち運べるタブレットを通じて、音声通話・ロボットから得られる視覚情報を基に応対する。

■結論
 図書館を活用するために必要な情報技術を述べてきた。この分野では技術革新に伴う変化が非常に速いため、図書館員は常にICT技術を学び続け、それを図書館業務へいかに適用するかを考える必要があるだろう。

参考資料

1.図書館と情報通信技術をめぐって(2):省令科目「図書館情報技術論」に関する考察 / 横谷 弘美 著, 情報学 9(2) :27-34,2012
2.公立図書館におけるレファレンスサービスの意義の再検討 / 渡邉斉志 著, Library and Information Science 66:153-165,2011
3.人文学資料オープンデータの可能性と現状(<特集>オープンデータ) / 橋本雄太 著, 情報の科学と技術 65(12):525-530,2015
4.デジタル環境の進展による図書館と利用者との関係の変容 : レファレンスサービスの仲介的機能の展開を中心に(<特集>デジタルコンテンツの進展と図書館) / 齋藤泰則 著, 情報の科学と技術 57(9):429-433,2007
5.情報技術を生かしたカスタマーハラスメント対策:大学図書館遠隔対応ロボットを例にして / 梅谷智弘 著, 情報の科学と技術 70(10):499-504,2020
6.カレントアウェアネス・ポータル, CA1908 – 研究文献レビュー:レファレンスサービスの潮の流れはいま / 小田光宏(カレントアウェアネス No.333 2017年9月20日)

講評(抄)

「図書館を最大限に活用する、または利用を円滑にするとはどういうことか」という定義づけはされていないが、設題に対する回答と推測できる部分は見受けられる。

総評:合格

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