設題1
指定したキーワードをすべて使って、各設問の解答を完成させてください。
1.現在、多くの公共図書館や大学図書館で、外部の書誌データを利用した目録作成業務が行われています。集中目録作業と分担目録作業(=共同目録作業)、それぞれの特徴(意味や役割、課題など)を明確にし、さらに今後の目録作成業務のあり方について自らの見解をまとめてください。(1,000字)
<キーワード:MARC、集中目録作業、分担目録作業、総合目録、書誌ユーティリティ>
解答1
■はじめに
情報検索の前提となるのは、情報が検索可能なように組織化された上で蓄積されていることである。
ここでは情報組織の根幹を成す「目録作業」、即ち図書館資料を検索するための書誌的情報の記録作業について述べる。
1.集中目録作業
他の図書館で利用されることを前提として図書館が一括して行う目録作業を「集中目録作業」という。
全国書誌作成機関が網羅的に収集した国内出版物に対して標準目録規則に基づきオリジナル目録作業を行うのが典型である。
作成された目録データは、コンピュータで処理できるよう一定のフォーマットで記述・記録されている。これを「機械可読目録(MARC)」と呼ぶ。
集中目録作業の利点は、他の多くの図書館における目録作業を省力化し、質の高い目録を標準化することができる点にある。他方、新刊書の目録を作成しようとする際にデータがMARCに含まれていない等のタイムラグ、またデータのフォーマット(特に「内形式」)が標準的な目録規則と部分的に一致していない等が問題点である。
2.分担目録作業
集中目録作業の対を成すのが、「分担目録作業(=共同目録作業)」である。これは複数の図書館等が作業の重複を避けるために協力し、分担して目録を共同構築するものである。
そこで作成された目録が蓄積されたものを「総合目録データベース」といい、またそのデータベースの管理を行う機関またはサービスを「書誌ユーティリティ」(ex.国立情報学研究所)という。
書誌ユーティリティの目録データベース中に書誌レコードが存在しない場合、ある参加機関がオリジナル目録作業(オリジナル・カタロギング)を行い、それを他の参加機関がコピー目録作業で利用することが分担目録作業の典型である。
この方法の利点として、複数図書館が同一の図書を購入した際、一つの図書館が作成した目録データを他館も使用できるため省力化できる。また、その作業の結果として各図書がどの図書館に所蔵されているかの情報が蓄積されるため、相互貸借(ILL)の基盤となる。
他方、オリジナル・カタロギングの質の保証、検索漏れによる重複レコードなど品質管理の面で課題が残る。
3.今後の目録作業のあり方
2022年現在、世界的な感染症流行の時代的後押しもあり、様々なオンライン化が劇的に加速した。それに伴いネットワーク情報資源もその存在感を著しく増した。今後図書館は、物的な資源のみならずこれまで以上に仮想的な情報資源をどこまで・いかに・効率的に組織するかの技術的課題に直面していくものと思われる。
参考文献
・『図書館情報学用語辞典』日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編, 丸善出版, 第5版, 2020
・「索引構造と情報組織化(研究)の隘路」田窪直規, 図書館界65(3):200-210,2019
設題2
2.地域の図書館(公共図書館)での現地調査もしくは調査対象館のHPの蔵書検索により、「蔵書の所在記号(背ラベル)の付与のしかた」について複数ケースを洗い出し、気づいたことをまとめてください。さらに、調査で得た内容や関連情報をもとに、書架分類と書誌分類という二つの点から、NDCの分類(記号)を活用することの意義や課題について考察してください。尚、調査対象館は“NDCを採用する近隣の公共図書館”で、取り扱う情報資源は“紙資料”とする。(1,000字)
<キーワード:書架分類、書誌分類、目録、配架(テキストでは排架を使用)、所在記号>
解答2
■はじめ
膨大な図書資料の中から求める資料を検索するときにヒントとなるのが「所在記号」である。所在記号は、書架分類記号/図書記号/補助記号から構成される。
このうち、書架分類記号とは、資料自体を主題に基づき体系的に排架するために付与されるものであり、本国では多く「日本十進分類法(NDC)」が用いられる。
ここでは千葉市図書館のHPの蔵書検索により所在記号の付与の仕方を調査した。
例は(著者名)『(資料名)』(出版社名), (所在記号)で記載した。
1.当該図書館の所在記号
キーワード:~の精神分析
1)スティーブン・A.ミッチェル『愛の精神分析』春秋社, 141.6/ミツ/
2)小此木啓吾『あなたの身近な「困った人たち」の精神分析』大和書房, 146//
3)小此木啓吾『「ケータイ・ネット人間」の精神分析』朝日新聞社, B361.4/オコ/
上記の調査から確認できるのは「~の精神分析」という語がタイトルについていても、「141:普通心理学、心理各論」「146:臨床心理学、精神分析学」「361:社会学」等の異なる書架分類記号が付与されていることである。特に2)と3)は著者も同一の精神科医だが、主題に拠って排架位置が分けられていることがわかる。
2.NDC分類を活用することの意義や課題
分類法に求められる機能は、複雑な主題であっても必ずクラス序列のどこかに位置付けられ、且つその主題の関連資料が周辺に排架され、見つけやすくなっていることである。
また、NDCを活用する利点は十進記号法により主題に「階層表現力」を持たせられる点だ。
米谷優子らの論文に拠れば、「書架分類は『一つの物的な資料に一つ付与し、所在記号の中核をなすべきもので、その資料の書架上の位置を決める分類』、書誌分類は『書誌記述に付与する分類で、目録上の分類であり、書誌レベルごとに付与できるし、また、同一書誌レベルに複数付与(分類重出)できる』分類である、と定義できる」とある。
続けて「NDCは本来書架分類であるが、細区分ができるよう分類構築を行い、書誌分類に対応可能という意味で『書誌分類をめざす』と自称している」と述べられている。
一方、書架分類としてのNDCの弱みを挙げると、書架分類は通常資料の背ラベルに表示されるため、記号の長さに物理的制限があること、また一つの資料に対して与える記号は一つのみという制限があることだ。この点で
一著作に複数の分類記号を付与できる書誌分類を併せて利用していく必要がある。
参考文献
・千葉市図書館 蔵書検索・予約
https:www.library.city.chiba.jp/licsxp-opac/WOpacTifSchCmpdPreExecAction.do(2022年4月11日閲覧)
・『日本十進分類法新訂 10版』の検討その(15):書誌分類と書架分類、情報学 13(1), 44-50, 2016
講評(抄)
・一部できているが要約した場合も引用にあたるため、どの部分をどの文献から引用したのか明確に区別できるよう記述できているとより良い。
総評:合格
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